スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営 – 書評・レビュー
以前ソライロマグでは、キャンプ・アウトドア初心者の方におすすめの本・雑誌をご紹介させて頂きました。今回はその中でも取り上げた、スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営という本の書評・レビューをしていきたいと思います。
前回の記事でも少しご紹介をさせて頂いた通り、残念ながらアウトドア用の解説本という内容ではありません。どちらかと言うと、ビジネス書としての役割の方が大きいのですが、人気アウトドアブランドであるスノーピークの考え方が伝わり、アウトドアグッズを選ぶ際のヒントにも成り得るかと思いますので、興味をお持ち頂ける方はぜひ最後までご覧くださいませ。
著者について
スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営の著者は、現在スノーピークの社長を務める山井太さんとなっています。山井さんは大学卒業後外資系の商社を経て、1986年に父が創業したヤマコウという登山や釣り道具のメーカーに入社し、オートキャンプのブームを起こしながら現在のスノーピークを創り上げていった方です。
山井さんが社員15名・年商5億円の入社時から、紆余曲折を経てスノーピークというブランドを立ち上げ、社員約160名・売上45億円となるまでの話を会社の運営目線で振り返って本にしたのが、スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営になります。
山井さんの素晴らしいなと思うところは、上場企業となった現在でも毎年30~60泊のキャンプをされていることです。しかも、スノーピークの本社がある新潟は、冬には雪が降り積もり一面が銀世界になってしまうにも関わらずです。
そんな山井さんが社長を務めるスノーピークがどのようにして、アウトドア業界における現在のポジションに上り詰めたのかということを、この本を振り返りながら(ネタバレにならないよう気をつけて)ご紹介していきますね。
snow peakとは
先程も少し触れましたが、snow peakというのは日本を代表するアウトドアブランドで、オートキャンプのブームを巻き起こした会社です。現在ではスノーピークのファンはスノーピーカーと呼ばれ、日本全国でキャンプ・アウトドアを楽しんでいらっしゃいます。
スノーピークのアウトドア・キャンプグッズは、非常にクオリティが高い代わりに他のブランドではありえないような高価な価格設定をしていることでも知られています(つい1ヶ月程前にも料金の改定が発表され話題を呼びましたね)。
それではここからようやく本題に入ります。スノーピークという会社が、他のブランドも驚くような価格で販売しているにも関わらず、多くのキャンパーに愛されているのかを紐解くべく、本の内容に沿ってご紹介していきましょう。
経営理念のsnow peak wayについて
スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営の中では方位磁石の指す北に例え、スノーピークの経営理念であるsnow peak wayについて書かれていました。ここでは、内容については割愛をさせて頂きますがリンクより確認頂けますのでよろしければご覧ください。
経営理念というのはたいていどの企業にもあり、企業のWEBページなどにも掲載されていますが、それを社員全員で共有し実行に移している会社は非常に少ないのではないでしょうか。スノーピークではワークルームの目立つ場所に表示されているとのことでしたが、もしそれだけであればここまで浸透させるのは難しいでしょう。
これは本の中でものすごく詳しく記載されていた訳ではないので推測ですが、山井さんを始めとする経営陣や上層部の方々が行動で見せていたり、採用・教育の項目でもご紹介する取り組みによって深く根付かせているのではないかと感じさせられました。
キャンプイベント スノーピークウェイについて
スノーピークには経営理念の他にもスノーピークウェイと呼ばれるものがあり、それはユーザー参加型のキャンプイベントのことを指します。1998年から始まり現在まで続いているイベントで、その場で商品を販売するのではなく、イベントを通じてユーザーと触れ合ったり、ユーザーの声を聞き商品開発や会社運営に反映させることを目的として行われているイベントです。
2016年には11回開催され、全ての日程で2泊3日のキャンプを楽しむ内容となっています。非常に人気の高いイベントであるため抽選に通らなければ参加できないのですが、スノーピークの社長・社員だけでなく、同じスノーピークファンとのふれあいができる点も魅力のイベントなんですよね。
スノーピークウェイでユーザーから聞いた話を反映させ、現在のなるべく直販に近い販売モデルが登場したという話は非常に興味深いものでした。
snow peakのものづくりについて
スノーピークのアイテムには全ての商品に永久保証がつけられています。
それを可能にしているのが、スノーピークの地元である燕三条という地域の強みにあります。その強みというのが江戸時代から続く金属加工の街であるという点なのですが、その強みを活かすためにほとんど全ての製品の製造を、燕三条の町工場に託されているのです。託すと言っても開発はスノーピークで行っていて、製品ができるまでは二人三脚で最後までしっかり取り組んでいるのも特徴です。
また、製品の開発から販売までを一貫して一人の社員が責任を持って担当しているという点も、スノーピークならではの大きな特徴と言えるでしょう。この特徴によって、社員がアウトドアについての知識を十分に持つようになることはもちろん、経営理念のsnow peak wayにあるようにユーザ目線に立ち商品の開発~販売を行えるような仕組みに自然となっていったのだと思います。
そしてて、製造の知識を社内に蓄積できるようにと、スノーピークの人気アイテムの一つでもある焚き火台は、本社にある自社の工場で作られているというのもポイント。この焚き火台が作られている工場や本社は見学ができるようになっているので、ぜひ一度は訪れてみたいですよね。
snow peakの販売方法について
スノーピークの販売方法については詳しく書いておきたかったので、3つの項目に分けさせて頂きました。
スノーピークアイテムの販売店について
スノーピークの販売方法の特徴としては、問屋などの流通系企業を通さず、直に小売店と取引をしている点にあります。しかも、スノーピーク製品の知識をしっかり持った販売員が接客できるように、スノーピークマイスターという独自の資格を設けその資格を持った販売員がいたり、スノーピークの社員がアウトドアショップの中で店舗を運営していたりするのです。
これってよく考えるとすごいことですよね。一切関係ない企業ではないですが、自社以外の企業に商品知識を身に着けさせるコストまで払って販売をしてもらっているんですから。
先日、東急ハンズで小さなものを探していて店員さんは絶対に分からないだろうけど、あまりにも見つからなかったので聞いてみたら、どの階の・どの場所に・どの様に展示され・どのような種類があり・どのくらいの金額で販売されているか一瞬で答えられた時くらいの驚きです。
いや、冗談ではなくそのくらい商品に精通するのって難しいことだと思うんです。それを自社ではない販売員(いつ辞めていなくなるかも分からない人)に時間もお金も投資する事って、すごく勇気のいることだと思うのです。もちろん販売店との信頼関係あってのことだとは思うのですが。
値引きをしない販売
アウトドア・キャンプをしている方なら常識というか当たり前のことだと思うので、何を今更と思われるかもしれません。しかし、原則ではあるものの、値引きをしない販売というのも大きな特徴の一つであると言えます。
特にアウトドア・キャンプグッズのように時代の流れによって、売れる・売れない商品が出てきそうなジャンルであるにも関わらず、セールをしないというのは驚きのポイントですよね。
しかも、値引きをするくらいなら在庫を自然に負荷をかけないように気をつけて、廃棄をするというから尚更驚きました。ただ、こういう思いがあるからこそ流行りが終わった後に、売れないような(求められないような)商品は作らないということに繋がっているのだろうと思いますし、だからこそ安心をして購入できるということでもあるのでしょう。
ポイント制度について
スノーピーク製品を店頭で購入されたことのある方であればご存知かと思いますが、スノーピークにもポイントカードの制度があります。
これについては特段目新しいことではありませんが、上位6-7%のユーザーの売上が会社の1/4を占めているという話には驚きました。これは熱狂的なファンに支えられているということもできますが、それだけ愛されるような企業運営。ブランド運営がされている証拠であるとも思います。
snow peakの採用・育成について
スノーピークの採用については、もうココまで来たら当たり前な気もするのですが、アウトドアに熱中している人でないと採用をしないという方針があります。それは本社の敷地内にあるキャンプ場で、仕事終わりにキャンプをし、翌日そのまま出社する社員がいるという程。もちろんキャンプ好きというだけでなく、主体性を持って行動できることという基準があるようです。
そして何より驚いたのが育成について。社員を信頼しお金をかける会社であろうということは想像できたのですが、日々社員の書く日報を社長である山井さんがチェックをし、しっかりとコメントを残すそうです。
個人的にはあまり仕事で日報のようなものを書いた経験はないのですが、いつの間にかグダグダになって誰も見ない・・・というのが起こりがちなものだと思うのです。それを毎日一人ずつ日報を読んでいくのはなかなかできることではないですし、それを続けられているのはさすがだなと感じました。
スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営の感想まとめ
最後にこの本を読んでの感想を、読んで良かった点と、少し残念だった点に分けてご紹介をさせて頂きます。
読んで良かったと思った点
・スノーピークの企業としての考え方が伝わってきた
・スノーピークのものづくりの素晴らしさを感じられた
・ユーザー目線は行動ありきあることを知れた
スノーピークの企業としての考え方や、スノーピークのものづくりの素晴らしさを感じられたという点については、自分の仕事に活かすというよりもアウトドア・キャンプユーザーとして、キャンプ道具を探す時に一つの決め手となるポイントになりそうであることに繋がります。もちろん、高価なブランドですので、何が何でもスノーピークというわけには行かないかもしれませんが、商品購入の際の一つの指標にできそうではあります。
また、ソライロマグを通じてスノーピークの商品をレビューさせて頂く際に、そういった商品に込められた想いまでお届けできればいいなと、勝手にではありますが気持ちが引き締まりました。
ユーザー目線と言うのは色々な企業で言われていることですし、今ではユーザーの側が企業にそれを求めてしまう程に浸透している言葉ですよね。しかしながら、言葉だけではなく企業側がしっかりとユーザーと向き合うには、自らが行動を持ってユーザーになりきりユーザー以上に商品と向き合わなければいけない、ということを知れたのは大きい発見であったかなと思います。
少し残念だった点
・流れがキレイにまとまってしまいすぎている
・社長以外の視点もほしかった
・親族経営であることが気になる
少し残念だった2点はそれぞれ、共通するものであるかもしれません。ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、きっともっと苦労をされたことがたくさんあるのではないか?という印象が拭えませんでした。そしてその苦労をどう克服していったのかを具体的な話で書いて欲しかったというのが本音です。
また、社長目線で全てのことが書かれていて、主人公のみで展開される本を読んでいるようでした。難しいのかもしれませんが、より具体的な社員さんやユーザーさんとの出来事が入っていたらさらに楽しめたのかなと思いました。
最後の親族経営であることが気になるというのは、山井さんが父親から継いだという話は最初から分かっていた訳ですが、最後に経営陣にご家族が入られているというのが少し気になりました。もちろん、家族経営の企業が全て悪いとは言えませんが、どちらかというと否定派なので、良い流れの時はいいのだけど、悪い流れが生まれてしまった時や後継者の問題が出てきた時に大丈夫かな?という不安があります。
スノーピークのおすすめアイテム
焚き火台
こちらは本の中でも紹介されていた、スノーピークの自社工場で製造をしている人気アイテムの焚き火台Lサイズです。ファミリーキャンプなどでも活躍できるサイズで、一生ものと言っていいほどしっかりとした作りになっているのが魅力。もちろん永久保証付きです。
チタンシングルマグ300
定価(税込):1,868円
サイズ:径75×84mm
容量:300ml
重量:67g
材質:チタニウム
著書内では登場はしませんでしたが、スノーピークの人気アイテムの一つチタンシングルマグをご紹介。ソライロマグでは300・450サイズのレビューを行っていますので、ぜひ上記のリンクからご覧くださいませ。
ステンレス製シェラカップE-103
定価(税込):1,026円(税込)
材質:SUS304(ステンレス)
容量:310ml
質量:108.5g
サイズ:直径122mm×45mm
目盛り:100ml・200ml
こちらもスノーピークの人気アイテムの一つ。シェラカップのステンレス製です。チタン製のものと合わせてレビューを行っていますので、もしよろしければご覧ください。
スノーピーク「好きなことだけ! 」を仕事にする経営
参考価格:1,620円(税込)
出版社:日経BP社
ページ数:224ページ
kindle本:あり
少し長くしかも文章ばかりの記事となってしまい申し訳ございません。出来る限りネタバレをしないよう注意をしながらレビューを書かせて頂きましたので、もしこの記事を読んでスノーピークに興味をお持ちになられた方がいらっしゃいましたら、上記から本をチェックしてみて下さいね。
ソライロマグでは今後もスノーピークを始めとして、アウトドア・キャンプグッズをご紹介させて頂く予定でいますので、もしよろしければfacebookやtwitterで更新情報をチェックなさってみて下さいね。
また、スノーピークではオンラインでも会員になることができますので、スノーピークの会員募集ページから詳細をご覧くださいませ。